汗をかく季節にむけて 多汗症のお話

こんにちは。柏市明原、ヤマ・クリニック 皮膚科医の甲斐やよいです。

肌寒い日がつづいたと思ったら暑い日がやってきて、体調管理に気をつけたい季節ですね。

さて、本格的に汗が気になる季節の前に、多汗症のお話をしたいと思います。

 

○多汗症とは

日常生活に支障を来たすほど、汗をかいている状態です。

多汗症には、全身に多量の汗をかいてしまう場合と(全身性)、

手のひら、足のうら、脇など体の一部にだけ(局所)、左右対称に多量の汗をかく場合があります。

「全身性多汗症」には、原因がわからない「原発性」と、体の他の病気を合併する「続発性」があります。

「局所多汗症」にも、原因や誘因のない「原発性」と、外傷や腫瘍など神経障害による「続発性」があります。

たとえば、「原発性腋窩多汗症」は、両脇だけに多量に汗をかくのに、他に体の異常もない場合をいいます。

 

○多汗症の原因は?

エクリン腺からの発汗が増えることが原因です。

発汗を促す交感神経が人よりも興奮しやすいのからではないか、とも言われていますが、まだはっきりしたことは分かっていません。

多汗症の方には、家族も同じ症状の方がいらっしゃる場合もありますが、今のところ、原因遺伝子は明らかにはなっていません。

 

○多汗症の治療は?

①塗り薬の治療

「原発性腋窩多汗症」に対してのみ、下に挙げるような保険適応のある外用剤が出てきています。

エクロックゲル

2020年11月26日に発売されたお薬です。日本初の、保険適応のある原発性腋窩多汗症の外用薬です。

ラピフォートワイプ

2022年5月23日に発売されました。いまのところは、2週間分のみ、処方できるお薬となっています。

これは、アセチルコリンという発汗を促す神経伝達物質を抑制する(抗コリン作用)外用薬です。1日1回、両脇に塗ることで、効果が期待できます。

注意事項としては、緑内障や前立腺肥大の方には使用できません。また副作用(抗コリン作用)により眼圧が上昇したり、尿閉(尿意があるにもかかわらず排尿できない状態)になることがあります。

処方には、医師による「重症な原発性腋窩多汗症である」という診断が必要です。

 

★自費の塗り薬★

1)塩化アルミニウム

2)硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)

どちらも自費診療ですので、部位や重症度を問わず治療を始めることができます。

ローションあるいはクリーム剤を対象部位に塗り、エクリン汗腺の周辺に炎症を起こすなどして発汗を抑える、というものです。腋の臭いに対しても効果があると言われています。

副作用としては、肌の赤み、かゆみといった症状がでることもあります。

②局所注射の治療

A型ボツリヌス毒素(BT-A)の局所注射

「重症な原発性腋窩多汗症」と診断された場合にのみ、保険適応で治療をすることができます。

交感神経の末端で、発汗を促すアセチルコリンの分泌をブロックするため、発汗を抑えることが期待できます。

効果がでるまでには4〜9か月と、個人差があるものの、ワンシーズン効果を持続させたい方には向いているかもしれません。

 

③飲み薬の治療

プロバンサイン

飲み薬としては唯一、保険適応のある薬です。

抗コリン作用の内服薬なので、①の中でお話しした通り、使用できない方がいらっしゃる点と、副作用には外用薬以上に注意が必要です。

 

④その他の治療

イオントフォレーシス

手のひらや足の裏の症状には有効と言われています。

内視鏡的胸部神経遮断術(ETS)

手のひらの多汗症に対して、他の治療法で効果がない場合適応となりますが、手のひら以外からの多汗(代償性発汗)をはじめとした合併症の対策が必要です。

 

いかがでしたか?

汗が気になって、勉強や仕事に集中できずお悩みの場合は、お近くの皮膚科にご相談ください。